医療の価値説明を目指すセミナー2023
「医療価値評価の胎動プログラム」
主催 | 田倉智之先生(日本大学医学部主任教授(本務)/東京大学大学院医学系研究科および受療者医療保険学術連合会(兼務)) |
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目的 | 社会と医療、経済と医療の関係(あり方)について、広い観点から学術的な議論を進めることを主旨とする。特に、医療の価値(Value of Medicine)を探求し、得られた成果を社会全体で活用する人材の育成を目的とする。 |
対象 | 上記趣旨に関心のある医療従事者、関連学生、研究者、企業就業者、行政従事者など |
開催時期 | 2023年12月~ 2024年3月(計18回) |
方法 | WEB方式 |
日程 | 水・金曜日18時以降予定(前年度と概ね同様) 以下参照 |
会費 | 1名につき税込み22,000円(シンポジウム参加費は別) |
参加条件 | ①原則、全ての開催日程に出席する方 ②事前に参加者登録した方限定 ③一定条件の履修終了者に、プログラム修了書の発行を予定 |
備考 | ・講義は基本的に全回ZOOMによるWEB方式となります。 ・プログラムの構成は適宜変更をされる場合があります。 ・添付のスケジュールは参考です。(本年度分は調整中) |
補足 | ・諸条件を満たせば、医療ビッグデータによる実際の研究と連携したOJT研修のプログラムを実施することも可能であります(詳細は別途)。 |
お問い合わせ先 | 医療価値評価の胎動プログラム事務局 電話:070-1270-0245 FAX:03-5800-8948 Mail:values.hehp@gmail.com |
本プログラムの主旨
2017年度より、東京大学大学院医学系研究科の医療経済系の講座に関わる有志が、医療の価値評価を目指す「医療価値評価の胎動プログラム」を試行的に始めています。本プログラムの具体的な目標として、例えば、以下のような医療経済評価の研究成果(臨床試験やモデル研究)を創出するのに必要となる各種知識の修得やノウハウの研鑽を行う機会の提供を標榜しつつ、当該分野のリーダーシップ人材の輩出や関連するエビデンスの蓄積の促進を目指しております。
● 医薬品の経済価値評価の例(医療イノベーションの価値)
・日本心臓病学会オフィシャル雑誌のJournal of Cardiology. (IF:3.12, 2021)
: Cost-effectiveness analysis of infliximab for the treatment of Kawasaki disease refractory to the initial treatment: A retrospective cohort study.
・ネイチャーグループ(NPG)の Scientific Reports. (IF:5.22, 2017)
: Cost-Effectiveness of Administering Rituximab for Steroid-Dependent Nephrotic Syndrome and Frequently Relapsing Nephrotic Syndrome: A Preliminary Study in Japan.
● 医療機器の経済価値評価の例(重症患者の救命価値)
・日本循環器学会オフィシャル雑誌のCirculation Journal. (IF:3.35, 2022)
: Clinical and Economic Evaluation of Impella Treatment for Fulminant Myocarditis : A Preliminary Retrospective Cohort Study in Japan.
・日本人工臓器学会オフィシャル雑誌の J Artif Organs.(IF:1.43, 2015)
: Preliminary report on the cost-effectiveness of ventricular assist devices.
プログラムの詳細は、添付のセミナー構成などをご覧頂ければ幸いですが、価値評価の基本概念や臨床経済評価の理論と手法(費用対効果分析も含む)、医療技術の経済価値評価のケース(医薬品と医療機器、疾病予防など)、医療分野における価値評価の問題(研究倫理)などを、医療政策(ヘルスケア市場)の特性を理解しつつ体系的に修学することを標榜しております。また、ビックデータ(約700万 件×10年間)による実際のデータサイエンス研究(AIや物理統計)などと連帯したO J Tプログラムも並走できる特徴も有しています。講師陣には、東京大学内はもとより国内著名大学、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構、統計数理研究所などの第一線でご活躍される方々を予定しております。
なお、本プログラムのご参加にあたっては、身近な問題意識などを踏まえ得つつ、事前に、検討したい論点や課題(疑 問)の設定をお勧めいたします。本プログラムにおける 18 回の講義及びシンポジウムの受講過程、またはO J T研究の 取組みの中で、是非、その解決や取っ掛かりを見つけて頂ければ有意義と推察します。
多様なチェンジ・ドライバーが顕在化する昨今の医療・介護分野を背景に、本プログラムのそれぞれのコンテンツを自然 体で楽しみつつも、今後のご活動の中で、参加によって得られた成果利用の最大化を志向して頂ければ幸いです。
2023年9月吉日 | プログラム責任者 田倉智之(日本大学医学部主任教授(本務)/ 東京大学大学院医学系研究科) |
プログラムの内容と講師(昨年度)
1.医療・介護を取り巻く社会経済の動向
(1) 保険政策: 金光一瑛先生(厚生労働省)
(2) 薬事政策: 芝武志、小野昭子先生(医薬品医療機器総合機構)
(3) 社会経済政策総論(財政論等、公共制度論含む): 森田朗先生
(津田塾大学)
2.医療分野における価値評価の基本概念
(1) 行動経済学: 古川雅一先生(東京大学:経)
(2) 価格理論: 田倉智之先生(東京大学:医)
(3) QOL分析: 下妻晃二郎先生(立命館大学)
(4) 費用と採算: 石井孝宜先生(石井公認会計士事務所)
(5) 価値予測: 今井潤一先生(慶應義塾大学:理)
3.医療の経済価値評価の理論と手法
(1) ビックデータ解析法(事例紹介を含む): 城大祐先生(東京大学:医)
(2) 医療統計学(研究デザイン論を含む): 笹渕裕介先生(自治医科大学)
(3) モデリング手法(マルコフモデルを中心に): 伊庭幸人先生(統計数理研究所)
(4) 費用対効果分析: 鎌江伊三夫先生(東京大学:公)
(5) ソフトウェア応用1(基本): 畠慎一郎先生(スマート・アナリティクス株式会社)
4.医療分野における経済評価のケース(医療政策と医療技術)
(1) 事例1(医療技術:分子標的薬等): 新田孝作先生(東京女子医科大学)
(2) 事例2(医療技術:埋込デバイス等) 許俊鋭先生(東京都健康長寿医療センター)、
田倉智之先生(東京大学:医)
(3) ソフトウェア応用2:統計ソフトを用いたハンズオン実習: 小寺聡先生(東京大学:医)
①コースA:マルコフモデル/モンテカルロシミュレーションによるHTAの実際
②コースB :価格推計(各種ポートフォリオ)におけるリアルオプション等の実際
5.医療分野における価値評価の問題(留意事項と必要条件)
(1) 討論1(意思決定): エビデンスに基づく治療戦略、製作の意思決定に関する議論を行う 秋野公造先生(参議院議員)、南学正臣先生(東京大学:医)
(2) 討論2(倫理と振興): 倫理観に基づく研究推進やイノベーションのあり方について議論する 黒木登志夫先生(日本学術振興会)
6.シンポジウム
・総合討論:プログラムの成果報告も兼ねて最後にシンポジウムを開催する
プログラムのスケジュール表
講義 番号 |
テーマ構成 | 概要 | 講師 (敬称略) |
日程・会場 |
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オリエンテーション: 12月1日(金)18時00分~19時00分(ZoomによるWEB形式) 2回目(予備日):12月6日(水)18時00分~19時00分 |
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1.医療・介護を取り巻く社会経済の動向 | ||||
1 | (1) 価格理論 | 対用水準や選択行動、価格形成の理論を概観し、医療における価格のあり方を論じる | 田倉 智之 (東京大学:医) |
12月15日(金) 18時00分 |
2 | (2) 社会経済政策総論(財政論等、公共制度論含む) | わが国の実体経済を背景に、医療政策の論点や社会保障政策の潮流を解説する | 森田 朗 (財務省) |
12月22日(金) 18時00分 |
3 | (3) 保険政策 | わが国の保険行政(医療分野)について概観し、今後の方向を読み解く | 山下 護 (厚生労働省) |
12月27日(水) 18時00分 |
4 | (4) 薬事政策 | 国内外の薬事政策(医療材料系)について俯瞰し、今後の動向を占う | 手塚 瞬、伊藤 拓哉 (医薬品医療機器総合機構) |
1月5日(金) 18時00分 |
2.医療分野における価値評価の基本概念 | ||||
5 | (1) 費用と採算 | 医療分野における費用の概念と構造、その解析手法や事業経営での活用法(採算性)を共有する | 石井 孝宜 (石井公認会計士事務所) |
1月10日(水) 18時00分 |
6 | (2)価値予測 | 医療事業等の付加価値の予測・決定に応用されてきた、DCF/リアルオプション法の最新の理論・手法を論じる | 今井 潤一 (慶應義塾大学:理) |
1月24日(水) 18時00分 |
7 | (3) QOL分析 | 患者アウトカム評価の動向を踏まえ、健康関連QOLの測定や分析を解説する | 下妻 晃二郎 (立命館大学) |
1月26日(金) 18時00分 |
8 | (4) 行動経済学 | 内外のケースを紹介しつつ、行動経済学の概念や基本理論を解説する | 古川 雅一 (京都府立医科大学) |
1月31日(水) 18時00分 |
3.医療の経済価値評価の理論と手法 | ||||
9 | (1) ビックデータ解析法(事例紹介を含む) | ビックデータを活用した医学研究の意義と今後の方向性について事例を交え解説する | 田倉 智之 (東京大学:医) |
2月7日(水) 18時00分 |
10 | (2) 費用対効果分析 | 費用対効果分析の基礎(国際GL)と最新の手法を各種の留意事項とともに解説する | 鎌江 伊三夫 (東京大学:公) |
2月9日(金) 18時00分 |
11 | (3)モデリング手法(マルコフモデルを中心に) | マルコフ連鎖やモンテカルロ法等のシミュレーション技術に関する基本理論を学ぶ | 伊庭 幸人 (統計数理研究所) |
2月14日(水) 18時00分 |
12 | (4) ソフトウェア応用1(基本) | SPSS等を用いた解析アプローチについてケーススタディを行う(多変量解析、傾向スコア、意思決定樹等) | 畠 慎一郎 (スマート・アナリティクス株式会社) |
2月16日(金) 18時00分 |
13 | (5) 医学統計学(研究デザイン論を含む) | 臨床研究のデザイン検討に関わる知識と最新の統計手法を解説する | 笹渕 裕介 (東京大学:医) |
2月21日(水) |
4.医療分野における経済評価のケース(医療政策と医療技術) | ||||
14 | (1)事例1(医療技術:埋込デバイス等) | 医薬品及び医療機器の経済価値評価(費用対効果含む)の評価事例を 解説する | 許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター)、田倉 智之(東京大学:医) | 3月1日(金) 18時00分 |
15 | (2) )事例2(医療技術:分子標的薬等) | 医薬品及び医療機器の経済価値評価(費用対効果含む)の評価事例を 解説する |
武井 卓 |
3月6日(水) 18時00分 |
16 | (3) ソフトウェア応用2(統計ソフトを用いたハンズオン実習) | サンプルデータでモデル計算(例:マ ルコフ・モンテカルロ、リアル・オプショ ン)の実際を学ぶ | 小寺 聡 (東京大学:医) |
3月13日(水) 18時00分 |
5.医療分野における価値評価の問題(留意事項と必要条件) | ||||
17 | (1) 討論1 (倫理と振興) |
倫理観に基づく研究推進やイノベーションのあり方について議論する | 黒木 登志夫(日本学術振興会) | 3月29日(金) 18時00分 |
18 | (2) 討論2 (意思決定) |
エビデンスに基づく治療戦略、政策の意思決定に関する議論を行う | 西 裕志(東京大学:医)、秋野 公造(参議院議員) | 4月3日(水) 18時00分 |
6.シンポジウム | ||||
・総合討論 | シンポジウムを開催する | - |
2024年5月以降予定 |